日々のあれこれーのんびりくらし

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終の棲家で花遊び❀

宮尾本平家物語 完読

自粛中にNHKの「100分de名著」で平家物語を扱っていて面白かったので、もう一度読んでみようと思ったものの原書は大変なので、宮尾登美子さんの小説で。

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宮尾本平家物語 全4巻

1巻目は清盛の幼少期。出生の秘密や継母との確執がありつつも父忠盛の大らかな愛に守られてのびのびと育っていく。

魔性の美女待賢門院にあこがれたり(のちには義妹の平滋子にも)、清盛もなんだかんだ言って美女が好きなのね。

時代だからとはいえ、あちこちで子供が増えすぎ(怒)

 

2巻目では、保元平治の乱に勝利し、一族で高位を独占し、武士ながら公卿に列せられる。

2巻目から主人公が清盛というより、清盛の後妻の時子(後の二位の尼)も語り手として加わってくる。

若者のときは清盛から見た社会だけで物語は進んだけど、2巻目以降は息子や(盛が多すぎ!系図見ながら読みました)、娘や嫁たちも出てきて、時子が子供たちをどのように見るかも関係してくるからかも。

清盛の長男の重盛が亡くなってから、栄華に陰りが出てきます。

 

3巻目から源氏の挙兵もあり、いよいよ源平合戦の状態になるのですが、宮尾本を読む限りでは頼朝はホント嫌な人でした。

木曽義仲もなんだか可哀そうな感じであっけなく小説からいなくなってしまう。

富士川の合戦や俱利伽羅峠とか平家の情けない感はあるけど、源氏のえげつない感じもしないでもない。

(壇ノ浦では平家側の漕ぎ手の非戦闘員の漁師たちまで源氏は殺してしまってるというふうに描かれていたから)

 

4巻でいよいよ平家は滅亡するのですが、全員が華々しく亡くなるわけではなくて、敗戦の将でありながら責任をとるでもなく妻子に未練たらたらのまま入水自殺するイケメン維盛とか、海に飛び込んだのに泳ぎがうまくて生き延びちゃうぼんくら総大将宗盛とか、色々いてそれはそれで面白い。

個人的には「見るべきほどのものは見つ」の知盛が好きだけど。

大河ドラマの「平清盛」を見ていないので、猛烈に見たくなりました。

再放送しないかしらん。

とにかく、人が多くて名前も似ていて、面白いけど系図無しでは混乱する感じでした。

4巻ではなくもっとじっくり人を描いて行けばいいのに、とも思うような。

1巻目と2,3巻では年月の経つスピードが違うように思います。

途中からめっきり登場回数が減る清盛が、若いころの寛大さとか大らかさが無くなって頑固で短気な老人になってしまうのもガッカリ。

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昔買った林原美術館蔵の「平家物語絵巻」の図録

小説を読み終わった後で、家にあった平家物語絵巻の図録で復習。

維盛、ちっともイケメンじゃなかった・・・

 

そうそう、この小説は基本的には一般的に言われている平家物語のエピソードをなぞっていますが、すごい仕掛けがありました!

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壇ノ浦のシーン。

左側の絵には、入水したのに髪が熊手にひっかかって救い出されてしまう建礼門院がいます。

息子の安徳天皇の後を追ったのに、自分は助かってしまうなんて。

 

生き残った建礼門院は、平家一門の菩提を弔う後生をすごすのが通説ですが・・・

 

 

なんと!

壇ノ浦で海の底に沈んだとされる安徳天皇ですが、この小説では守貞親王とすり替えられていて、
安徳天皇のほうは平家の血を残したいとする平家一門によって都に戻り、
守貞親王として生き延びるのです。

都に戻ったときには同母弟が後鳥羽天皇となっていましたが、
この天皇の系譜は後に承久の乱を起こして遠流。

承久の乱の頃には守貞親王は出家してひっそり埋もれていたのですが、息子が後堀河天皇として即位するのです。

 

平家一門の怨念に近い祈りが成就したか?!って感じですが、
後堀河天皇の息子は四条天皇というのですが、これまたすごく残念な天皇様。

2歳で即位して(父帝が院政を行う)、外祖父たちに守られつつすくすくと成長していくのですが、

いたずら好きが高じて女房たちを転ばせようと滑石をしかけて自分が転倒して脳挫傷で12歳で亡くなってしまうという・・・

キャー、なんてことでしょう。

当然まだお子様もいなくて、平家の血をひいた天皇もここで断絶。

 

あ、歴史的には安徳天皇崩御で平家の血は途絶えてますけどね。

 

登場人物が多い小説を読むと、自分でどの役をどの俳優さんが演じたらいいか、なんてことも想像したりします。

今回は大河ドラマがすでにあるので(当然登場人物も微妙に違うけど)
自分の配役とドラマの配役で比べてみたりするのも面白いですね。