日々のあれこれーのんびりくらし

日々のあれこれーのんびりくらし

終の棲家で花遊び❀

原田マハ「暗幕のゲルニカ」を読んで

美術作品を題材にした小説が多い原田マハさん。
今回もやっと図書館から借りられた「暗幕のゲルニカ
読み始めたら本当に夢中になって読み切ってしまいました。

ピカソが描いた「ゲルニカ」という大作は、スペインのバスク地方ゲルニカという街がフランコ将軍・ナチスドイツ軍により爆撃を空爆を受けたことに対して抗議の意味を込めて描いたものです。
爆撃機も武器も無く(折れた剣は描かれてるけど)、子供を抱いて泣き叫ぶ女性、天をあおいで嘆く人、倒れる兵士、ねじくれてる(?)牛馬、などなどモノクロームピカソらしく抽象的に、でも大迫力の絵画。
ただひたすら強烈に「悲しい」「怒り」「絶望」といった市民の感情を描くことで、
反戦」のメッセージを表現しているようです。

パリ万博のスペイン館で展示されたものの政治色が強すぎて当初批判も多く、
その後ナチスドイツにパリが占領されたことから、
ヨーロッパ巡回後もピカソの元には戻らずアメリカに渡り、
「スペインが真に民主化するまで」母国に戻さないでほしいとピカソが言い残したとあります。


この小説は、二つのパートが並行して進んでいきます。
一つは、ピカソがこの「ゲルニカ」を書き始めるころからナチスドイツにパリが占領されている間、
ピカソの愛人だったドラ・マールを通して、ピカソとの生活と「ゲルニカ」がアメリカに渡るまでの様子を描いています。

もう一つは、アメリカが「テロへの報復」としてイラク侵攻を始めようとしている2003年、
9・11で夫が犠牲になったMOMAのキュレーターで、ピカソの研究者である日本人女性八神瑤子が、
アメリカ政府の政策に対し『暴力の連鎖は結局何も生まない』ということを
9・11で傷を負ったニューヨークで、ピカソの作品展示を行うことで伝えようとしていく様子を描いています。

剣よりも強いアートの力で人の心に訴える、と瑤子は「ゲルニカ」を再びMOMAで展示しようとするものの
(スペインに戻る前はMOMAで展示されていた)そこには色々な事情があり難航します。

瑤子の企画展が無事に開かれるかどうかはぜひとも読んでみてください。
最後のページがあっけなく思ったけれど、それまでがとてもスリリングでした。


当時のアメリカ大統領は架空の人物になっていて、声明も作者の創作になっていたけど、
国連本部にある「ゲルニカ」のタペストリーに暗幕がかけられたことは実話だそうです。
イラク空爆前夜のアメリ国務長官の会見時に「ゲルニカ」がかけられていたことが
作者がこの小説を書くきっかけになったとインタビューで読みました。

ゲルニカ」の持つメッセージが有名なだけに空爆の前に隠す。
アメリカの正義の戦争の前に相応しくないと考えたのでしょうが、かえって絵のメッセージを強めてしまったようですよね。(未だに誰がなぜ隠したのかはわからないそうです)


私はこの絵を二度スペインで見たことがあります。
二度ともすごい迫力と思って見たものの、どうにも私はピカソが苦手。
この絵もピカソという世界的に有名な画家が描いた絵で、
その影響力はものすごいとおもうけれど、ポストカードですらほしいとは思わないです。

だけど、

絵でも、歌でも、小説でも、映画でも、
芸術が戦争を鼓舞することができるなら、
芸術がもっと戦争やテロを減らすこともできるかもしれない。



このところ毎日北朝鮮情勢のニュースを見るけど、
よくわからない国だけに何が起こるか読めないけど(それはテレビやネットでしか情報が伝わらないから?)、
ミサイル攻撃の前日には公邸に宿泊する日本の総理を見るとちゃんと上の人たちには情報が入っているみたいで、総理が私邸にいるようならとりあえず当面は安心なのかしら。
核弾頭を積んだミサイルよりも日本国内の原発を狙えばとてつもないことが起きるのにそんな話は聞かないし、
それなのに色々な最新武器をアメリカから購入することになって軍事予算はうなぎのぼりで、
もしかしたらトランプ大統領が日本に武器を買わせるために北朝鮮を挑発してる演技をしているのかなーとか思ったりして。(裏ではしっかり「対話」とかしてロシアを通じて援助してるとか。ま、妄想です)