鹿児島出身の友人が今年の大河ドラマには不満があるらしい。
初回で、江戸にいるはずの斉彬公と幼少期の西郷どんと出会うシーンに「ありえない!」と怒りそれ以来見られなくなったとのこと。
そんな友人に「もし、大河ドラマで扱うとしたら誰がいい?」と聞いたら
「赤松小三郎!」と即答。恥ずかしながら全く聞いたことが無い。
どこで出会った人?と聞くと、上田の旅行中に上田市の資料館で出会ったとのこと。
早速図書館で借りた本を読んだらこれがまた面白い、というかすごい人でした。
信州上田の出身で下級武士の家に生まれながらも勉学に励み、
英語にも通じ、西洋の議会政治や兵学の研究もして、
しかし、藩の出自を問わず弟子を取ったため、幕府と通じたと思った薩摩藩士に暗殺されてしまったと。
(どうもそれは大久保や西郷が黒幕と考えれている)
後に「こんなに簡単に幕府が倒れるなら暗殺するのではなかった」と悔やまれたとか。
この著者は歴史家ではないので、むしろ、学会の暗黙の了解に従わずに自由に発言できるとして、赤松小三郎の生涯とその憲法構想、また「明治維新神話」、「長州レジームから日本を取り戻す」といった章立ててまとめていて、今まで知らなかったことが根拠とともに書かれていて目からウロコでした。
なぜ、赤松小三郎が歴史の表舞台から消されたのか?
西南雄藩出身の純粋な革命の志士たちが成し遂げた明治維新という神話には、
守旧藩出身の下級武士が先進的な民主主義思想を持っていたという事実は不都合であり、
その存在は無視せざるを得ないようです。
他にも、一般的に学校で教えられる歴史の常識では、
当初、幕府がアメリカと結んだ関税は20%で、この割合なら国内産業の保護にもなったはず。
しかし、その後、長州が下関戦争(四国艦隊砲撃)の敗戦で、幕府は賠償金の支払いも負わされ、
改税約書で重量税方式で一律5%の関税率にするというイギリスの要求を飲まされてしまう。
イギリスは、阿片戦争で負けた清国と同じような悪条件を日本に押し付けたそうです。
元社会科教員の私も、恥ずかしながら教科書通りに教えていました。
関税率がどれくらいかなんて検証したこともなかったです。
薩土盟約も上下両院による議会制なども含んでいてそのような考えのもとに明治維新が進んでいればよかったのに、内戦を起こしてもうけたいという英仏の思惑もあり、薩長はあえて戊辰戦争を起こして反対勢力を打ち滅ぼし、専制政治を行いますよね。
いかにも、東北の諸藩が頑迷固陋だったかのような宣伝をして。
(以前に読んだ「維新の肖像」という小説もこちらの立場に似ているかも)
五箇条の御誓文のほうが赤松の「御改正口上書」よりはるかに後退しています。
そのようなことが丁寧に描かれてて本当に面白かったです!
最終章の「長州レジームから日本を取り戻す」の章は首相に読んでほしいかも(笑)
もともと、日本には「鎮魂」の思想はあったけど、靖国神社のような「招魂」の思想はない。
中国や朝鮮の道教の儀式にはあり、長州はそちらの影響を受けたんじゃないかと。
戦死者の魂を閉じ込めて、新たな戦死を強要するための装置とするために、祖父の魂を利用されたくないと。
私は非常に興味深く読んだのですが、
赤松小三郎を紹介してくれた彼女にこの本を紹介したら、ちょっと複雑な顔をしていました。
長州ほどではないけど、薩摩もあんまりよくは書かれていないから。
赤松小三郎のように、開明的な思想の人は幕府側にもいたと思います。
しかし、幕府が悪、だから明治維新が起こった。
明治維新によって、植民地かを回避し、日本の近代化が進んだという神話を維持するために
色々事実を隠蔽したり歪曲したりしているようです。
この明治維新神話の見直しももっと進めばいいのに、と願います。
私は、幕末を大河ドラマにするなら河合継之助がいいと思うのですがどうでしょう?
「峠」を見てみたいなー。
本当は日本古代史がいいのですが、天皇家が骨肉の争いをするので問題になるかもしれませんね。