日々のあれこれーのんびりくらし

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終の棲家で花遊び❀

2023.7読書記録

阿部智里「烏に単は似合わない」

阿部智里「烏に単は似合わない」

ファンタジー歴史小説平安時代っぽい単語(八咫烏が支配する山内の世界で、日嗣の御子の后選び)に惹かれて借りたけど、読後感は微妙。

これが松本清張賞受賞作品と思うと違和感あります。

春夏秋冬の四つの宮にそれぞれお妃候補がいて、駆け引きや各家の事情や個人的事情などもあり、途中までは面白く読んでいたのですが、

伏線貼り過ぎて、最後で「ん?」と納得しかねる結末になっていました。

でも、人気があるみたいで八咫烏シリーズは続編がたくさんありました。

多分私は読まないけど。

門井慶喜「地中の星」

門井慶喜「地中の星」

東京に地下鉄を導入した早川徳次と、その工事の途中のあれこれ。

中島みゆきの名曲のタイトルに似ているし、プロジェクトXを連想させ、ワクワクしながら読みました。

ロンドンで地下鉄の有益性を知って東京に持ち込もうと思ったものの、安全性を心配され出資者がなかなか見つからない。

なのに、やっと紹介してもらった渋沢栄一が関心を示したと知られた途端に出資者が集まる、なんてところが時代を感じます。

最終盤の五島との鉄道バトル(早川の東京地下鉄道VS五島の東京横浜電鉄)を、最後は戦時中に国が横取りするというのが理不尽だけど、日本らしい。

 

ただ、私は会社の経営の話よりも、実際に現場で働く技術者・職人の話のほうがワクワクしました。(実家が大工なもんで)

覆工担当の木本胴八の神のような危険察知能力(?)は実話であってほしい。

掘削担当奈良山勝治が偶発的なミスで現場を追われ日雇い労働者に落ちてしまったところで、池井戸潤作品なら後半で呼び戻されたりするのに残念でした。

 

関雄二「古代日本人と朝鮮半島

関雄二「古代日本人と朝鮮半島

カルチャーセンターの古代史講座で知り合った人に教えてもらった本。

第一章で、弥生時代の始まりが最新の研究では紀元前10世紀ごろまで遡るとあって、驚きました。

私の知識では紀元前3世紀ごろ、中国の政情不安のために、朝鮮半島から逃げてきた人たちによって稲作が伝えられ、一気に東進したと思っていたから。

縄文時代の狩猟採集生活も途中から農業をしながらの定住も並行して行っていたらしいし、そういった狩猟・農耕集落と弥生式の農業専念型(こんな風には本には書いていない)の集落は、当初共存しながら、だんだんと全国に広がったらしい。

へぇえ。鹿児島にも最大級の縄文遺跡があると書いてあり、これまた驚き。

先月、青森の縄文遺跡群(世界遺産)行ったばかりなのに。

 

第二章以後は、「スサノヲはアメノヒボコ」とか「鎌足は余豊章」の関雄二節満載で、適当に読み飛ばしていた。

「〇〇は◇◇だった」というのは初めは面白いけど、根拠が弱くて納得しかねる。

身近に歴史に興味ある人が少ないから、紹介してもらえるのはありがたい。

 

額賀澪「屋上のウィンドノーツ」

額賀澪「屋上のウィンドノーツ」

高校生の吹奏楽部の物語。

主人公の志音は中学まで引っ込み思案で何に対しても後ろ向きで、親友の瑠璃ちゃんがいつも助けてくれていた。が、高校は思うところあって県立高に進む。

亡くなった父のドラムに接したことからドラムを始め、吹奏楽部に引っ張り込まれて、そのうちに一生懸命になっていく。

部長の大志も朗らかに見えて訳あり。

楽しく読みました。

一生懸命頑張っても、コンクールがダメだったというのもまたいい。

そうそううまくいくものではないはず。

テレビで全国の強豪の吹奏楽部を紹介する番組を見ると、校内でのオーディションがあったり、やっとつかんだレギュラーの座なのにコンクールでダメ金だったりしているから、なかなかコンクールで勝ち上がっていくというのは大変なのでしょう。

 

志音のように自分に自信がないからって、あそこまで引っ込み思案なのはどうかと思うが、まあそういう子もいるのでしょう。

自意識過剰すぎてこじらせて、何も言わないで誤解されてしまう子。

それが、吹奏楽部に入って変わっていくのが青春って感じがしました。

 

千葉ともこ「震雷の人」

千葉ともこ「震雷の人」

中国の唐朝、安禄山の乱の時代の歴史小説

ヒロインの采春は武術が得意で兄の張永を戦場で助けたいと思うも、女性が戦場に出ることを周囲は歓迎しない。

しかし、許婚の顔季明(書家の顔真卿の甥)は、そんな采春を理解し愛している。

顔季明は、人を動かすのは心を動かさないといけないと考えていて(武力で脅して動かすものではないと)、文官として国のために役に立とうとしているさなかに命を落とします。

采春は、顔季明の仇を討つために家出して、旅芸人にかくまわれつつ、仇に近付くのですが・・・

 

平原太守のもとで将兵として戦っていた張永は唐に忠誠を誓い、燕の反乱軍と戦っているのですが、
敵討ちのために庶民とともに旅した采春は、「国の頂点が誰だろうと庶民には関係ない」ということに気づきます。

中間の役人がちゃんとしているから、唐から燕になっていたとしても影響がない。

むしろ、民を捨てて逃げた唐の玄宗皇帝こそ悪いのではと思う場面も。

采春は、仇のはずの燕軍で将軍として認められて戦ったりもします。

燕はもともと異民族が多いので、女性だろうと能力があれば気にしないという設定。

仇の安禄山も討ち、燕の反乱軍も征討し、兵とともに戦った人望のある建寧王は兄王に謀叛の疑いで殺されて・・・

せっかく反乱を収めても再び権力闘争をする唐朝。

ラストで故郷に戻ってきた張永と采春兄弟は季明の残した碑を見に行きます。

「一字、震雷の如し」

「一字が、人を動かし、世を動かす」という季明の言葉を思い出し、それぞれの道に進んでいきます。

 

面白かったです。武術の達人の采春の女性としての生きづらさ、文官を目指す季明の志、武力が強くて寛容でも、それだけでは逆にピンチになる張永とか、キャラクターがいい感じです。

仇の安禄山の息子の安慶緒に采春は理解をしめしてしまうし。

 

忘れないようにあらすじを書きました。

冒頭から面白くて、メモしておかないとまた借りてしまいそうだったので。