雑誌の書評で見つけた原田マハさんの「太陽の棘」
史実に基づいていて、著者が「書かなければいけない」と思ったという話。
この春に家族で沖縄に行ってから、沖縄のことが気にかかっていた私は読んで良かったです。
太平洋戦争後、米軍占領下の沖縄に米軍主導の下に米軍文化部芸術課作られ、
その廃止後沖縄出身の画家たちが「ニシムイ(北の村の意)芸術村」というコミュニティを作り、
米兵たち相手に絵画を売って生計を立て始めていた。
沖縄に赴任してきたエド・ウィルソン医師は、偶然知り合った彼らの人柄と、
その芸術性の高さに惹かれ友情を深めていくのです。
スタインバーグコレクションが沖縄県立美術館に里帰りして展示されることとなり、
土産物程度の絵だと思われていたのですが、実際にはそうではなく、
それを見た著者がこの作品を書こうと思ったということです。
美術展では、その二つが並べられて展示されていたそうです。
スタインバーグ医師とその同僚の医師たちは、ニシムイの画家とその家族に好意的で
物語でも心温まるところが多いのですが、
漏れ伝わる「支配するものと支配されるものの関係」に胸が痛みます。
スタインバーグ医師たちは終戦後の沖縄(すでに戦闘はない地)で、
何の治療に当たっているかというと、精神科の医師として赴任しているということに驚きました。
筆舌に尽くしがたい地上戦が行われた沖縄で、
生き残った住民も深い傷を負いましたが、
戦闘に参加した兵士たちも精神を病む者が多かった。
朝鮮半島で戦争が始まりそうな時期でそのために、
「人殺しをしたことなんて気にしないで、再び人殺しをできるような精神状態」にしないといけない。
普通の市民として生きてきたら、人を殺したい欲求なんておきない。
敵国と闘うのと、敵国の住民を殺すのは天地ほどの差があるように思うけど、
いざ戦争が始まったらどちらも同じですよね。
やはり辛くて早送りしでやめてしまいました。
その中で、やはり戦闘に参加した米兵にも帰国後もずっとうなされる人がいたと妻の証言もありました。
「後方支援」とか「自己保存のための防衛に限る」とか、
話題の法案の行方がとても気になります。